静夜思 娘永眠
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娘永眠

2014-07-12

木曜の夕方、最愛の娘が逝ってしまった。
7月10日。
誕生日の翌日。

前触れもなにもなく、直前までいつもどおりで、元気そうに見えた。

前日は雷雨だったため、定時で仕事を上がった私は1日遅れで娘の誕生日ケーキを買って帰った。
家族にはモンブランとイチゴのケーキを。そして主役の娘には、娘の大好きなメロンで出来たケーキを。

帰宅した私をいつもどおりの笑顔で迎えた娘は、ケーキを見て、それは嬉しそうに目を輝かせた。
「1日遅れちゃったけど、大好きなメロンのケーキ買ってきたから、あとで一緒に食べようね」
と声をかけると、娘はテーブルに置かれたケーキの箱の匂いを笑顔で存分に堪能し、それからハーネスを鼻でつついて散歩の催促をした。
台風接近中の関東。
酷く蒸し暑い陽気だったため、「今日はちょびっとだけにしよう」と言いながら、それでも嬉しくてピョンピョン跳びはねる娘にハーネスを装着し、いつものように出発した。
そしていつものようにいつものコースを娘の腰の状態に合わせてのんびり歩き、途中娘が立ち止まる度、あるいは後ろ脚の引き刷りが強くなるたびに休憩を入れて腰のマッサージをし、ゆっくりしたペースで戻ってきた。
擦れ違うワンコにガウガウ喧嘩を売るのも、「立派だなぁ」と笑顔で声をかけてくれる人に吼えかかって威嚇するのもいつもどおり。
だが、自宅まであと10mちょっとの距離まで来たところで、娘が立ち止まった。
後ろ脚がふらついたので腰が痛いのかと思い、声をかけながら腰に手をやると、娘はそのままゆっくりと座りこみ、そして力が抜けたようにその場に伏せた。
急に呼吸が荒くなり、驚いた私はさらに娘に声をかけた。
娘の頭が大きくぐらりと揺れたのはその直後のこと。
娘の躰はそのままバッタリと横倒しになった。

家までわずか10数メートル。
慌てふためいた私はそのまま家までダッシュし、家の外からガラス戸を猛烈に叩いて叫び、家族を呼んでふたたび娘の許へ駆け戻った。
散歩に出掛ける前に、娘は必ず水を飲んで出掛ける。
わずか15分足らずの散歩で、熱中症になってしまったのだろうか。

娘は変わらずその場に倒れたままであり、駆けつけた家族とともに声をかけながら躰をさすっていると、一瞬大きく頭を持ち上げてまたしても地面に倒れた。
「動物病院に電話!」
家族に言われて、私は待たしても自宅にダッシュで戻り、家に居た別の家族にその旨を伝えて家を飛び出した。
そして途中でもう一度あわてて引き返し、急須に水を入れて娘の許に駆け戻った。

娘の口に水を注いでやるが、娘はピクリとも動かない。
動転していて気づくのが遅れたが、そのときには既に、息をしていなかったように思う。
どうしよう。さっきまであんなに荒かった呼吸がない。
私は夢中で娘の首に手をかけ揺さぶった。
整体師の家族は、その間ずっと娘にマッサージを施していたが、効果はなかった。

家の中から電話の子機を耳にした家族も話しながら飛び出してきた。
呼吸が止まっていると電話越しの獣医に家族に伝えて貰った直後
「え!?ダメ!!? もうダメッッッ!!?」
家族がそう叫んだ。
そんなはずはない。たったいままで元気に歩いていたのだ。
笑顔で私を振り返り、楽しいねと声をかけると手の甲にキスをしてくれた。

私は無我夢中で家族とともに娘を家の中に運び込み、布団の上で心臓マッサージと人工呼吸を繰り返した。
何度も何度も娘の名を呼び、叫びながら、逝っちゃだめだ、帰ってくるんだ、一緒にケーキを食べようと繰り返しながら夢中で娘に声をかけつづけた。
だが結局、娘が息を吹き返すことはなかった。

諦めきれずに娘に取り縋り、声をかけつづけているさなかに、訓練所の先生方が来てくださった。
「えっ、なんでっ!」
娘の変わり果てた姿を見て、先生は声を上げた。


娘の遺体は、結局その夜のうちに火葬のため、動物愛護センターに引き取られていった。
家族と訓練所の先生方とで話し合った結果、そのような結論になった。
その場にいながら、私は話し合いに参加することが出来なかった。
ただひたすら娘に取り縋り、蒸し暑い中散歩に連れ出してしまったことを娘に詫びつづけた。
お通夜のような形で一晩。
そう言ってくれた先生もいたが、暑さで腐敗がしやすいことと、娘に取り縋ったまま動けない私を見るに見かねた家族がこのままではあまりにも辛すぎるからということで、そういう結論に達したようだった。
耳には届いていたが、私はなにも口を挟めず、頭も回らなかった。

硬直してしまうと棺に収まらない。
肛門が開いてしまった娘におしめをあてがい、シーツで前脚と後ろ脚をそれぞれ折りたたむようにくるむ先生方の様子を、私はただひたすら茫然と眺めているばかりだった。

迎えに来た業者に引き取られていった娘。
大好きだったシャチのぬいぐるみとおやつとメロンのケーキ、花束を一緒に納め、狭い箱の中に入れられてたったひとりで行ってしまった娘。

家族がお金を支払い、明日のお昼前にご遺骨をお届けします、とやりとりする様をやはり茫然と聞き流し、ただただ娘の棺に寄り添っていることしか私には出来なかった。


その晩は殆ど寝られず、夕方以降の場面が何度も脳裡にフラッシュバックしてその度にベッドから飛び起きた。

まんじりともしないまま夜が明け、気持ちの整理が付かないまま仕事に出掛け、喉風邪が鼻風邪になったのだと誤魔化してマスクをしたまま仕事をし、定時になると同時に職場を出て帰宅した。
逸る気持ちと、遺骨になってしまった娘との対面が怖くて足が竦む思い。

だが、帰宅してリビングのドアを開けると、窓際のテーブルに白い箱が置かれているのが目に飛びこんできた。
線香と蝋燭と、お供えのおやつと、花と。

娘が逝ってしまった。
こんなにも突然に。こんなにも呆気なく。

娘の遺骨を膝に載せて抱きかかえたまま、私は動くことが出来なかった。
昨日の今頃はまだ元気だったのに。
私の帰宅を笑顔で出迎えてくれたのに。
1日遅れの誕生日ケーキを食べるのをあんなに楽しみにしていたのに。


死因は未だわからない。
だが、激しい気温差で体調を崩し、突然死するペットがここ最近急増しているという。
家族が昨日、娘に飾ってやる花を買いに行くと、これで6件目だと言われたという。
そんなのは他人事だと思っていた。

2ヶ月前の健康診断の結果は良好。
ただ、乳腺の1箇所に腫瘍が出来ていたのが気になっていた。
検査の結果は良性とのことだったが、腰ばかり気にして、その腫瘍に気づいてやれなかったことを後悔したばかりだった。
やんちゃに見えても、もっと躰を気遣ってやらなければ。
そう思った矢先だった。


気性が極端に荒く、気難しく、驚くほど知恵が回るという娘の性質上、もし違う人に飼われていたなら、早々に保健所に連れ込まれて処分されていたかもしれない。
あるいは外に繋がれたまま、放置されて、もっと短い寿命を終えたかもしれない。
重い病気にかかって、長期間苦しむことがなかったのだから、考えようによっては幸いだったかもしれない。
こんなにも大事にされて、可愛がられて、家の中で家族に囲まれ、好き勝手に振る舞い、最後は大好きな人と大好きな散歩に行けたのだから、幸せな一生だった。

先生方や家族は口々に言ってくれた。
短い距離を短時間、ゆっくり歩いたのだから散歩のせいでもない、と。

だが、私はそれでも思わずにいられない。
元気そうに見えたけれど、本当はどこか調子が悪かったのかもしれない。そのことにただ、気づいてやれなかっただけなのかもしれないと。
あれだけ蒸し暑かったのだから、もっともっと散歩の距離を短くしてやればよかった。
それとも無理をさせず、クーラーの部屋で涼ませてやっていればよかった。

気性が荒い娘をなんとか躾けようと、若い頃はひどく厳しく叩いたこともあった。
散歩中に擦れ違う犬や人に吼えかかり飛びかかる娘も、ちゃんと躾ければきっと静かに歩けるようになる。
そう信じて殴り飛ばしたこともあった。
だが、もっと早く、それも娘の個性なのだと認め、受け容れて、散歩中の犬と擦れ違いそうになったらコースを変えて回避するなど、柔軟に対応してやれば娘が痛い思いをすることもずっと少なかったに違いない。

きっと愛する家族を喪った人は皆同じ思いをするのだろう。
もっとああしてやっていたら。もっとこうしてやればよかった。


娘の死を、私はまだ上手く受け容れられない。
目が覚めると彼女の姿を探し、階下から聞こえてくる、私を呼ぶキュピキュピと言う甘えた鼻声に耳をすませてしまう。

洗面所で顔を洗うとき、私は自分が右寄りに立つことを今朝はじめて知った。
どこに行くにもピッタリとくっついて歩いていた娘。
私が歯を磨くとき、顔を洗うとき、彼女はいつも必ず左隣に寄り添っていた。
私はそんな彼女の頭を左手で撫でながらいつも歯を磨いていた。
そして歯を磨き、顔を洗い終えるといつも「今日も可愛いねぇ」と必ず声をかけていた。

左側は彼女のためのスペース。
いなくなってはじめてそのことに気づいたとき、止め処なく涙が溢れた。

11年と1日。



セリナ、たくさんの幸せな時間を、ありがとう。。。



追伸 友人各位

    だれにもひと言も連絡していないため、この記事で彼女の訃報を知って皆さぞ驚いたことだろう。
    本当に申し訳ない。
    でも、霊前に供える花もおやつもおもちゃも、何もいりません。
    いまは、そっとしておいてください。
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無題

2014-07-12 so_art [URL]

心中お察し申し上げます。
セリナちゃん、お疲れ様でした。
静夜思さんの娘でホントに良かったと思います。

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無題

2014-07-13 くるみっこ [URL]

はじめまして。

いつもブログを読ませていただいていました。
ZAKIさんのセリナちゃんへの愛情がとても伝わってくる日記を、いつ更新されるのかと楽しみにしていました。
こんなに家族から愛されている“娘”さんはとても幸せな子だな~といつも思っていました。

突然のことでなんと申し上げればよいかわかりませんが、ZAKIさんも体調を崩されないようお気をつけください。

編集

皆様

2014-07-13 ZAKI [URL]

シークレットでコメントをお寄せくださった心優しき3人の皆様、本当にありがとうございます。
いつかは看取らなければならない生命。
わかっていたつもりでも、突然の別れはやはりとてもつらく、受け容れがたいものですね。
ですが少しずつ、娘との楽しく幸せだった思い出を胸に、前向きに頑張っていこうと思います。
お心遣い溢れるお言葉を本当にありがとうございました。


so_artさん
コメントをお寄せくださりありがとうございました。
ただただ私にベッタリだった娘ですが、こうしてあらためて思い返すと、本当にベッタリだったのは娘ではなく私のほうだったのかもしれません。
彼女が私の許に来てくれた幸せに、心から感謝したいと思います。


くるみっこさん
はじめまして。そしてコメントをお寄せくださり本当にありがとうございます。
いつも娘の記事を楽しみにしてくださっていたとのこと。とても嬉しかったです。
やんちゃな娘でしたから、ネタは次から次へと出てきたのですが、日常の雑事にかまけて家族で大笑いするばかりで、こまめに記事にまとめられなかったのが今となっては残念でなりません。
ですが、娘との日常の一部とはいえ、こうしてブログという形で思い出の数々を記事にまとめることができ、たくさんの方にご来訪いただいて笑っていただけたことは私の宝物です。
娘との日々は間違いなく最高に幸せな、かけがいのない時間でした。
その楽しく幸せな時間を共有してくださり、本当にありがとうございました。


まもなく暑い季節になります。
皆様もどうぞご自愛の上、熱中症や夏バテなどにはくれぐれもお気をつけてお過ごしください。
あたたかなお言葉、そして私の体調を気遣う優しいコメントに心から感謝いたします。
いつまでも悲嘆に暮れていると気短だった娘に気合いを入れられてしまいますので、少しずつ浮上していきたいと思います。
本当にありがとうございました。

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