静夜思 娘の病気
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娘の病気

2014-07-20

最愛の娘が急逝してから、10日あまりが過ぎた。

私の日常は、娘が居た頃とあまり変わらない。
朝目が覚めるとまず最初に天気を確認し、仕事を終えて職場を出る際にも天気と気温を確認する。
洗面台に立つときは相も変わらず右寄りの位置に立ち、近所で小さな子供や赤ん坊が泣いたり雷が鳴れば、あわてて娘の様子を見にいこうとしてしまう。
夜10時をまわると、腰のマッサージ兼寝かしつけの時間だとついつい反応してしまうし、深夜にトイレに行く際には、階下で寝静まっている娘を起こさないようにとつい気を遣ってしまう。
階段を降りる際には、既に取り外されてしまった柵と、その向こうからこちらを見上げていた娘の姿を無意識のうちに探してしまう――

私の生活は、娘を中心にまわっていたのだと、あらためて痛感させられる。
娘は私にべったりの甘えん坊だと思っていたが、本当は私のほうが娘と離れられなかったのかもしれない。


なんの兆候もないまま、11歳の誕生日の翌日に急死してしまった娘。
前記事で、原因はわからないと書いたが、後に、拡張型心筋症を発症していた可能性が高いことが判明した。
うちでお世話になっている獣医さんと、訓練所で懇意にしている獣医さん、双方ともにおなじ見立てとなった。
ひょっとすると、不整脈を併発していた可能性もあったかもしれないとのことだった。

この病気は大型犬によく見られ、とりわけシェパードに多い病気で、うちの娘のように直前までピンピンしていて突然急死するケースが多いのだという。
娘は恐らく、倒れたあの瞬間に心臓に繋がる重要な血管が切れてしまったため、どれほど懸命に心肺蘇生を行っても、心臓の拍動や呼吸が戻ることはなかったのだろうとのことであった。
人間で言うならば、海外で心臓移植をしなければならない病気で、もし倒れたあの時点で獣医さんが即座に緊急手術をしたとしても、まず助けることは出来なかった。そう言われて、なんとなく、ああ、これがこの子の寿命だったのかもしれないと、少しだけ思えるようになった。

もっともっと一緒に居たかったし、もっともっと一緒居られると信じて疑いもしなかった。

だが、今となっては、あの一瞬の苦しみだけで済んでよかったのかもしれないとも思う。
並外れて気性が荒かった娘は、かかりつけの獣医さんにも、本当に深刻な、重い病気に罹ってしまった場合、このコは治療が出来ないコだから、最悪、安楽死させるしか手がないとまで言われていた。
私はそれでも、年齢が年齢だから、ゆくゆくはかかるかもしれない莫大な治療費のことなども念頭に置いて、相応に貯えていくつもりでいた。
けれど娘は、私に一銭の負担もかけることなく、そして安楽死という選択を突きつけられる苦しみとつらさを味わわせることもなく、本当に呆気ないほどポックリと、予想も覚悟も出来ないうちにあっさり逝ってしまった。

やんちゃで、落ち着きがまるでなかった娘らしいといえば、娘らしいのかもしれない。


亡くなる直前まで兆候らしい兆候は見られなかったといったが、散歩中に立ち止まってたびたび休憩をしていたのは、腰が痛むためではなく、ひょっとすると呼吸が苦しかったのかもしれない。
病名を知っていろいろ調べるうちに、最初とは違う、別の後悔が私の中でひろがっている。
暑がりの娘が、暑い場所でハアハア言うのはいつもどおり。
健診で、すべての臓器、血液検査で出た数値が正常だったから大丈夫。
安易にそう信じて安心するあまり、異変に気づいてやれなかったのではないだろうか。

この苦い後悔は、きっとこれからもずっとつきまとうのだろう。


娘を譲っていただいた訓練所は、うちで今お世話になっている訓練所とは別のところで、気軽に行き来するには少し遠い場所だったこともあり、最初にお邪魔して娘を選び、連れてきて以降は年賀状のみのやりとりしかしていなかった。
だが今回、娘のことを報告するため、じつに11年ぶりに長の無沙汰を詫びつつ電話連絡をしたところ、先生はすぐに娘のことを思い出してくださった。そして、
「ああ! あの血統のコはみんな、誰にでも尻尾を振って愛想を振りまく穏やかな性質のコだから、飼いやすかったでしょう?」
と言われて驚愕する羽目になった。
迎えに行ったときに会わせて貰った母犬はたしかに優しく穏やかで、非常に清楚な印象だったが、よもや同腹の兄弟姉妹もすべて温厚で、人懐っこい性格だったとは……。
てっきり気性の荒い血筋だと思っていたのだが、気性が荒かったのは娘のみで、他は皆、おっとりと優しい性質だったらしい。

いったいどこで育て方を間違えたのか、とも思ったが、娘が極端に臆病で警戒心が強かったのは赤ん坊の頃からの筋金入り。その臆病さと警戒心の強さ、神経質な気質が攻撃性となって現れてしまったことは間違いないので、どうあっても娘は娘にしかならなかっただろう。

私はそれでも、娘を選んだに違いない。
気性が荒く、知恵が回り、専門家の目から見ても扱いが難しい成犬に成長するとわかっていたとしても、11年後にあまりにも呆気なく辛い別れをすることになるとわかっていたとしても、私はやはり、たくさんの可愛らしい仔犬たちの中から娘を選び、我が家に迎えただろう。

可愛いねぇ。イイコだねぇ。

目が合うたびに、そう言うのが口癖のようになっていた。
本当になんて可愛いんだろう。世界中を探してもこんなに可愛いコは滅多にいない。可愛すぎて困るくらいだよ、と。
家族はそれを耳にする度に、親バカにもほどがあると呆れかえり、娘はといえば、嬉しそうに、そしてちょっとはにかんだように耳を横に寝せて私に顔と躰をすり寄せていた。


娘を喪った大きな穴は、きっとこの先も埋まることはないだろう。
だが、それでも思う。
娘と出逢えて、ともに過ごせた時間は間違いなく幸せで、かけがえのないものだった、と。

皆様もどうぞ、無償の愛を無条件に返してくれる愛しい存在との時間を、これからも大切に過ごしてください。

  P1020348.jpg
                 「アタチの可愛さは永遠よ!」
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