静夜思 たりないのは勇気だけ
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たりないのは勇気だけ

2014-12-23

かつて訓練所の先生が娘についてこう評価した。

学習能力と記憶力は抜群。いざというときに自分で判断する能力も最高。原因と結果を正確に繋げて計算できる頭脳も完璧。運動能力も優れている。
職業犬としてこれほどの逸材は滅多にいないぐらい申し分のない個体!

ただし……。

そう、娘の高評価にはしっかりと但し書きがつけられていた。
神経質で繊細すぎるのが玉に瑕、と。
気が小さくて過敏すぎるところだけが唯一惜しいところだったそうだ。
あとちょっとだけ、どっしり構えられる肝の据わり具合が加われば、これほど最高の犬は滅多にいないんだがなぁ、と。
プロの目から見てもそう思える性質を、娘は備えていたんだそうだ。

家にいるとただの甘ったれ我儘娘だったが、たしかに言われてみれば知恵のまわりかたはかなりのものだった。
ひとりであの手この手を考えて、自分がどうしたいのか、我々にどうしてほしいのかをつねに明確に伝えようとしていた。
警察犬としての訓練生時代もそれは同様だったそうで、一緒に数頭の仲間たちと勉強に出掛けると、他の仲間たちが静かに待機して指示を待ってから言われたとおりの練習を始めるのに対し、うちの娘だけは先に自分が憶えている準備運動を済ませてしまい(先生が黙って様子を見ていると、手順もすべてきっちり合っているのだそうだ)、
「先生! アタチはもう全部終わりました!」
と報告をしてニコニコしていたのだとか。
「なんだ、おまえだけもう先に全部やっちゃったのか!」
と先生が笑いながら声をかけると、ちゃっかりした顔で
「準備万端ですっ!」
と。
娘の中で、準備運動を早く終わらせれば、それだけ早く勉強に入れる。
準備運動は毎回おなじことをするので、いちいち指示を待たなくても自主的にさっさと終わらせてしまえばいい。そういう計算が働いていたようである。

先読みの能力、そしてなにをどうすればどういう結果に繋がる、ということを明確に見通せる能力が非常に優れていた、と言われた。
最初は警察犬にする気など毛頭なく、歴代ワンコたち同様に普通に家庭犬として育てるつもりだったため、娘の気性の荒さが問題となって大きな事故が起こるまえに職業犬としての訓練を入れることで強い攻撃性を緩和させよう、という結論を出した時点での娘の年齢は、そこそこいっていた。普通ならば、とっくに現役でバリバリ仕事をしている年齢になってはじめて本格的な訓練を開始したため、これがもっとずっと早い、適正な時期に仕込めていたならどれほどすごい犬に育てられたことか、と訓練所の先生にはたびたびその素質を惜しまれた。
私としては、娘が楽しく勉強して、ときどき仕事で達成感を味わって満足してくれればそれで充分だったので、多くは望みません、と笑って応じていたのだが、今になって、ひとつだけ悔やまれることが出てきた。

それは、もし仮にもっと早く職業犬としてきちんと仕込まれ、社会性と個を確立させてやれていたら、娘の過剰すぎるほどの恐がりも、ひょっとしてかなり緩和させてやれたのではないか、と思うようになったからである(まあ、持って生まれた性格なので、どこまで恐怖を取り除けてやれたかはそれこそやってみなければわからなかっただろうが)。

夏に急逝した娘の死因は心筋症。
大型犬に多く、娘のように突然死するケースも少なくないという難しい病気だが、この病気には心因性ストレスも大きく影響するのだという。
獣医さんに後日、直近で何かありませんでしたか?と訊かれたのだが、思い当たることだらけだった。
倒れる直前の数日、雷雨が立てつづけに発生したり、すぐ近所で小さな子供が連日激しく泣き叫ぶ声が聞こえたりしていた。娘はその度に緊張に顔を硬張らせ、オロオロしながら家の中を走りまわり、自分にとっての怖い音が聞こえない場所を探し求めて恐怖に身を震わせていた。そして娘が亡くなったその日、自宅のすぐ向かいに仔猫が2匹捨てられ、朝から大鳴きしていたという。根っからのニャンコ恐怖症である娘は、その声でパニックになり、その娘を宥めるのに家族もひどく苦労したのだそうだ。
怖いのだからしょうがないと宥めてその場だけやり過ごすのではなく、もっと早い段階でそれらの娘にとって恐怖となる刺激のひとつひとつを、怖くはないのだ、大丈夫なのだと丁寧に教え込んで安心させ、恐怖を克服させてやれていたら、娘にかかるストレスは、長い目で見たときにずっと少なくなって、もっと平穏に過ごさせてやれたのかもしれない。

娘のことは、充分可愛がって大切にしてきた。
だが、犬を飼う責任というのは、ただ可愛がって愛情を注いでいればいいわけではないのだと、今更ながら痛感している。
娘の性質をもっといい方向に伸ばしてやれるだけの知識と能力を飼う側がきちんと備えていたなら、娘の攻撃性はもっともっと緩和して、そしてさまざまな物音に恐怖を味わってパニックを起こす回数も少なくなり、大きなストレスで身体に負担をかけることもなく、もっともっと長生きさせてやれたのかもしれない。
すべては後の祭りなのだが、飼い主として未熟すぎたなぁと己を省みる今日この頃。
本当に後悔は先に立たないんだけどね。。。

とはいえ、娘を通じて私自身も随分成長させてもらった。
かなりのベテランでないと、プロの訓練士でも手玉に取られて扱うことが非常に難しいと唸らせた娘である。
その娘ときっちり渡り合って暮らしてきた経験から、ある程度の犬ならば、素人なりになんの苦もなく扱える自信だけは持てるようになった(いいんだか悪いんだか……)。
今のところはまだ予定はないのだが、もし次に新しい家族を迎えることがあったなら、この経験をもっともっといい方向に活かせる飼い主になろう。そんなふうに思う今日この頃であったりなかったり。

しかしあのときの先生のあの一言。

 「たりないのは勇気だけ!!」

ホントになぁ。もうちょっと図太い神経でいてくれたらよかったのになぁ、娘よ!
(下の写真、なんでリードくっついてるんだろう。。。 それこそ雷でも鳴った後かな。パニクった挙げ句に部屋飛び出して階段転げ落ちないように押さえることも何度かあったから……。あるいは階下で来客があって、それこそ飛び出していってお客様に飛びかからないようにするための予防か。いずれにせよいやはや……(-"-;A)

         PA0_0177_e1.jpg
   「やあねぇ主ったら。アタチは難しいんじゃなくて賢くて繊細すぎたレディだったのよ
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